最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2590号 判決 1952年7月11日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人権逸、同中津市五郎の上告趣意(後記)第一点について、
記録によると、本件臨検捜索並びに差押は昭和二三年六月二五日東京中野簡易裁判所裁判官松田正寿の発した臨検捜索許可状(記録一七丁)及び差押許可状(記録一八丁)に基いてなされたものと認めることができ、右各許可状には臨検すべき場所、捜索すべき物件及び差押すべき物件が明示され、被告人に対する間接国税に関する犯則事件について臨検捜索及び差押をすることを許可する旨記載されている。従って、本件捜索差押が令状によらない無効のものであるということを前提とする論旨はその理由がない(なお、昭和二五年(れ)第八四一号同二七年三月一九日大法廷判決参照)。
同第二点について。
収税官吏が間接国税犯則者処分法(昭和二三年法律第一〇七号による改正前のもの)一条により質問し、同法一〇条により顛末書を作成するにあたっては、その質問の方式並びに顛末書の作成方式について何ら規定されるところがない。従って、数名の収税官吏が共同して質問し、共同して顛末書を作成したとしても、その一事を以って、これを違法、無効と目すべきではなく、被質問者の供述記載に信憑力なしということはできない。従って、論旨は理由がない。
同第三点について。
公判調書に、弁護人が公判期日に公判廷に出頭し、被告人のため弁論した旨記載されている以上、旧刑訴六四条により右記載に反する主張をすることの許されないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一四六一号、同二四年二月八日第二小法廷判決)。従って、論旨は理由がない。
よって刑訴施行法二条旧刑訴四四六条により主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)